鍼灸施術には、常に2つの側面があるもの。
術者(鍼灸師)としては「より高い効果を出したい」と思っている。一方、患者さんとしては「痛くなく」「安全に」施術を受けたいと思っている。もちろん言うまでもないが、安全性について術者も十分に考えているものだ。
とはいえ、痛みを治したいと思うあまり、術者がつい強刺激にて施術を進めてしまうケースも少なくない。患者さんとしては、肩腰の痛みを治すのと引き換えに、多少の我慢を強いられることになってしまう……。
なかなか、悩ましい問題でもある。でもクリアしなければならない問題といえる。
今回の話は、術者にも患者さんにも意味がある話かもしれない。
【結論】鍼は筋肉に刺すのではなく骨に当てたほうが良い
一般的に、鍼は筋肉を狙って刺入するものであると認識されている。
筋肉に触れたうえで、凝り固まった部位に鍼を刺すことで、血液の流れが良くなる。すると筋肉に酸素が送られ、痛みが緩和する。
ただ最近、というか前からうっすら、「骨に当てたほうが効果が高いのでは?」と考えているんですわ。
鍼を刺入することは変わらない。でも筋肉ではなく骨に直接刺入する。狙う部位が変わるってことね。
ここ数か月は意識的に筋肉を狙わず、骨に鍼を刺している。あくまで個人的な統計になってしまうのだが、明らかに施術効果が高い。
例えば「ぎっくり腰」の治療だと、施術後から自由に起き上がれるようになったり、痛みが0になっていたり。その患者さんの場合、いつもはそこまで改善しない。一概に鍼の刺し方が変わったからともいえないけど。
施術中の「痛みが減ったけどまだ残っている」という感覚も少なくなっているようだ。ぱっと痛みが消える。
そして、鍼灸施術にも起こる「好転反応」も小さいといえる。
なぜ、骨に刺したほうが効果が高いのか?
まだ完全は把握していないけど、おそらく筋肉と骨をつなげる「腱」にアプローチできているからだと思っている。

では、鍼を骨に当てるメリットをいくつか書き記してみよう。
メリット①個人差が小さいので効果が出やすい
これは術者側のメリットになるだろう。
筋肉の太さや凝りの度合いって個人差が大きい。でも腱(骨)は個人差が少ない(と思う)。
ということは、どこを狙えばよいかがより明確になり、結果的に施術の成果も出やすい。
メリット②安全に施術ができる
身体には、鍼を刺入する際に十分な注意を要する部位がいくつか存在する。
理由は、皮膚の下に内臓が存在するからだ。だから刺入する深さや角度に気をつける。術者によってはそういった部位は狙わない。
骨であればこういった不安は解消される。鍼が骨を貫通することは絶対にないので。そもそも深く刺入することは不可能となる。
だから安全度が高いと言える
メリット③弱い刺激で治療できる(響きがない)
先述したように、筋肉の大きさや凝りの強さには個人差がある。
筋肉に刺入する形式の一般的な鍼だと、症状によっては強い刺激が必要だったり、深く刺入する必要があったりする。たとえば、お尻の筋肉が凝り固まっている場合など。(術者の技法にもよる)
一方、骨に当てる鍼であれば、強い刺激はほとんど必要ない。細い鍼での弱刺激で十分な効果が出る。
人体の構造的に、筋肉に刺す鍼と比べてレバレッジが効くのかもしれない。
そして、鍼独特の「響き(ひびき)」と呼ばれる感覚がほとんどない。筋肉が「ビクン」と動くあの響きが苦手という患者さんも決して少なくない。
静かに痛みが改善される。つまり患者さんもより安心して施術を受けられる。
日々研鑽!当たり前も疑っていきたい
最初に触れたように、術者の考えと患者さんの考えは異なっていることもある。
鍼治療の場合、方法を誤ると患者さんに負担を強いることにもなりかねない。
「より効果が高い」かつ、「安全・安心」な鍼灸を提供するために、当たり前だと思っていることも疑っていきたい。
術者の常識は患者さんの非常識かもしれないし。変に業界に浸からず、「一般的な目線」というものを大事にしながら。
これからも日々研鑽していこう。
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